【interview】
【OLDCODEX インタビュー】
音楽、言葉、アート。
全てがリンクする画期的な新世界
OKMusic編集部
2018年07月20日 10:00
TVアニメ『Free!-Dive to the Future-』のOP主題歌「Heading to Over」をシングル発売するOLDCODEX。『Free!』シリーズの主題歌は今回で4作目。それだけにモチーフとなる作品、そして互いのクリエイションに対するふたりの真摯なスタンスが濃密に表れている。
作品につながるギミックやヒントを
今回はいろいろ散りばめている
2月にシングル「Growth Arrow」、4月に配信シングルの「One Side」、そして今回の「Heading to Over」と、今年は随分リリースペースが早いですね。
Ta_2
もう3枚目ですからね(笑)。なので、自分の中では連作になっている部分もありつつ、もちろん全てタイアップ作品が違うので、打ち出しているテーマ性やカラーは少しずつ違うんですよ。「Heading to Over」に関しては、これで『Free!』の主題歌をやらせてもらうのは4作目ということで、続けてやれることの嬉しさと、だからこその意地みたいなものが強かったかな。すごく感情的でもあるし、すごくギミックにあふれた楽曲でもある。
“意地”というのは具体的に言うと?
Ta_2
あえて自分たちが…というか、主に俺が入れている縛りなんだけど。『Free!』の楽曲って1作目の「Rage on」以降、全部BPMを220で統一してるんですよ。それは俺のこだわりで、新しいシリーズで作品を知った人が前のシリーズを観返した時に速度感が変わっているように感じるのが嫌なんです。まぁ、劇場版の主題歌だった「Aching Horns」に関しては高校生である主人公たちの中学生時代の話ということでハーフの110にしてるんですけど、今回の『Free!-Dive to the Future-』では彼らが大学生になるので、やっぱり同じ220でやりたいなと。あと、事前の打ち合わせで監督のほうから“より競技者としての目覚めだったり、男としてひとつひとつ壁を越えて強くなっていくさまを描きたい作品なんです”と聞いていたんですね。確かに年齢的にも一番骨太になっていく時期だろうし、今の自分たちにもすごくオーバーラップするものが多かったから、であれば自分たちの良さが一番出るドロップCチューニングでやりたいなと。ただ、同じシリーズの曲をそういったテーマ性も把握した上で作り続けてる分、自分の中で納得ができるメロディーに辿り着くのに時間がかかっちゃいましたね。
だから、気持ち良いくらい低音が唸る骨太なヘヴィチューンに、もがきながらも挑み続け、光を追いかけ続けるキャラクター像が浮かぶんですね。男性として脱皮しようとする時の一種の苦しさみたいなものも感じました。
Ta_2
なんか楽曲として、“さわやかにやり切ってる!”っていうのは違うんじゃないかと思ったんですよ。競泳がモチーフの作品なので、水だとかさわやかなところに目が行きがちだからこそ、そうじゃない気持ちの面は大事にしたかったんです。歌詞のほうでもYORKE.に今回は攻めてほしいっていう話をしましたね。
YORKE.
そういう具体的なイメージがTa_2の中にあったから歌詞を書くにあたってもいつもより余白のない、ストレートな言葉を選ぶアプローチになったかな。『Free!』の世界観とも改めて真面目に向き合っていて、だからサビに“Take Your Marks”という競泳用語を使いたいってTa_2が言った時もすんなりと納得できたし。
Ta_2
最初は違う言葉で上がってきたけど、ここはどうしても“Take Your Marks”を使いたいって、俺からリクエストしたんです。いわゆる“よーい、ドン!”の“よーい”にあたる言葉なんですけど、その瞬間ってどの選手もみんな絶対に“勝ちたい”と念じてるじゃないですか。その瞬間のピリッと感を盛り込みたかったんですよね。あとは、競泳ってリレーになると4人で泳ぐから、間奏のラップ部分も4分割にして。俺らはステージに上がる時は5人だから、4人でバトンをつないで、最後にギターソロに渡すというかたちにしました。他にもそういった作品につながるギミックや細かいヒントはいろいろ散りばめてます。
言われてみれば、2サビの《窒息しそうな青》なんていうワードも、まさに『Free!』ならでは。
YORKE.
うん。今回は全てが『Free!』というモチーフとシンプルにつながっていて、ひとつひとつに意味がある。物事をクリエイティブする時って、作り手の意図みたいなのが必ず隠れてるからね。全部言っちゃうとつまんないし、歌詞はすでに組み上げた言葉なんで、そこから読み取ってくれたものが全てだということもあるから。その点、アートのほうが説明は必要かもしれないよね。感性で感じるものだから、もうちょっと丁寧に解説してもいいかなとは思う。例えば、このアーティスト写真のバックに置いてある絵にしても“どうしてこんなに色が流れてる?”と訊かれれば、水をぶっかけたからで。最後に水をかけたのは『Free!』から得たイメージで、流れていない飛沫は波のイメージとかって。
そこがOLDCODEXの画期的なところですよね。歌詞を書き、作品の世界観を理解し尽くしているYORKE.さんが、それをアートによって視覚化することもできるという。
YORKE.
そうなんだよね。言葉で書いたことを絵にして、絵からまた言葉を感じてもらってってリンクしてる。Ta_2の衣装にしても、これ、『Free!』の全てのキャラクターの色が入ってるんですよ。それを見て俺もTシャツを塗ったんです。その愛にあふれたファッションにもTa_2の気合を肌で感じたし。だから、絵の前に立っても説得力が強いでしょ?
Ta_2
逆に俺自身、こうやってYORKE.のアートを最初に見られるっていうのがひとつの楽しみだったりもする。で、その前で写真を撮らせてもらうと、それこそペンキの匂いだったり足裏がペンキでベチャベチャになるのが、すごく心地良かったりするんですよ。だから、俺ら、大抵絵の前で撮った写真のほうがいい。
YORKE.
やっぱりパワーが出るよね、なんか。
Ta_2
勝手にスイッチが入る。初めて赤坂BLITZ(現在のマイナビBLITZ赤坂)でライヴした時も、後ろを全部絵にしたいって俺が提案して、それができた時はすごく嬉しかったから。YORKE.の絵を見た時に生まれるそういうワクワク感を俺は毎回楽しんでる。
自由度の高いツアーで
ひとつの世界を体現していきたい
きっとYORKE.さんの絵自体に何かしらの生命力やパワーが宿っているんでしょうね。
Ta_2
カチッとはまるんですよ、何かが(笑)。
YORKE.
ちなみに今回はジャケットの印刷でも新しいトライをする予定で。これまでの色分解を超えた再現性の高い…特にマゼンダ系の色の立ち上がりがさわやかになる手法をやろうと考えてる。それが上手くいけば今後選択肢が増えて、狙いをもうちょっと明確に視覚化できるようになるんじゃないかな。
お話をうかがっていると曲や詞だけじゃなく、アートもおふたり自身から生まれているもののように思えてきました。
YORKE.
それはありますよ。だって、僕はただ闇雲に絵を描きたいわけじゃないもん。Ta_2に描かされてるだけ!
Ta_2
ははは!
YORKE.
いや、最近はマジでそういう感覚でOLDCODEXやってる。もともとTa_2の脳内から始まったプロジェクトだから、やっぱりTa_2のビジョンが明確な時は説得力も強いし。いつでもそこに自分自身が染まれるように準備をしとくのが一番大事なことだと俺は思ってるし、それを毎回楽しんでる。
Ta_2
そう言えば「Heading to Over」の歌入れでブースに入る前、ボソッとYORKE.が“これTa_2の歌だもんな”って言ったのが俺の中ではすごくしっくりきてる! 俺も歌詞を見た時、ストレートだけどYORKE.らしい想いがいっぱい詰まった曲だなって感じていたから、お互いが同じように受け取っているのはすごく面白いことだなと。
YORKE.
そんなこと言った? あんまり覚えてないけど…ま、でも、そうだよね。
全てに意図があり、全てがつながっているから、それがカチッとはまった時の爆発力も大きいんでしょうね。
YORKE.
そういうのTa_2好きだよね。そこがリンクしていかないと納得しない、たぶん。
Ta_2
そうだと思う。そうやって積み上げたもののほうが説得力も強いから。ただいたずらに出せばいいっていう感覚でもないし、ひとつひとつを大事にしながら作りたい。
YORKE.
だから、タイアップもね、超真面目に向き合ってきたんですよ、僕たち。
Ta_2
そう。意外とね(笑)。
YORKE.
でも、本当に『Free!』はOLDCODEXにすごく自由にやらせてくれて! おかげで良い相乗効果が生まれて、今は『Free!』から入った人たちもライヴに来てくれてるから、アニメ盤を出そうって話になった時も前向きにとらえられたんですよ。ただ、単なるアニメ盤にはしたくないから初回盤や通常盤には入ってない曲を毎回入れてる。そうじゃないと作りたくない!って俺が最初に駄々こねたんだよね(笑)。
Ta_2
今回のアニメ盤に入ってる「Clean out」は前へと進む激しさを前面に押し出した「Heading to Over」からすると、スッと休憩ポイントに入れるような曲になっていて。雰囲気もいいから、ぜひアニメ盤に入れたいと俺がリクエストしたんですよね。
つまり、『Free!』からOLDCODEXを知った人には、“まずはアニメ盤から聴いてみて!”と胸を張って言える作品になっているということですね。
Ta_2&YORKE.
そうそうそう!
Ta_2
今回、カップリング曲に関しては全てコンペで選んだんです。だから、ある程度バンドのみんなやアレンジャーに自由にやってもらった分、音作りだけは俺がきっちり手を掛けてやりました! 自分の声をどう楽器とブレンドすれば一番効果的かっていうところがもう分かってきてるんで、そこは大事にしたかったんですよね。逆に録るまでは歌うことに集中して、いつもに比べると音数も少なくて隙間の多い曲たちだったから、ファルセットを多用してみたり、三声でコーラスを録ってみたり、あえて母音をちょっと外しながら歌ってみたり。テクニカルなところに自分の意識が行ってたから、それはすごく面白いアクセントになったと思ってます。
YORKE.
作曲してる人が全部違うからそれぞれポイントが違う面白さもありつつ、「Heading to Over」が出来上がってたからゴール地点が明確だったところはあったかも。
8月末から始まるツアーも、上海・台湾を含めた追加公演も発表されましたし、かなりビジョンが見えてきたのでは?
Ta_2
うん。どの曲もちゃんとステージ構成や演出まで見えているし。むしろ、そうじゃないと俺の中で曲を発表する理由にならなくて嫌なんですよ。で、俺ら的には今まで以上にカロリーの高いツアーになる気がする。でも、身体に一回入っちゃえば、病み付きになるタイプのツアーでもあるんじゃないかな。
YORKE.
特に今回はアルバムツアーじゃないから自由度が高いんだよね。今年に入ってからの3枚のシングルの7曲をベースにどう組み合わせていくか…7曲に合いそうな曲も過去の曲にはたくさんあるし、3枚それぞれにコンセプトがあるんで、そういう意味でもセットリストは面白いかもしれない。3枚のシングルタイトルを組み合わせた“GROWTH TO BE ONE”というツアーのタイトル通り、年明けまで続く全17本でひとつの世界を体現していきたいですね。
取材:清水素子