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Matsuo

【interview】
心血を注いできた『Free!』と、再びの邂逅。熱き想いを語る――鈴木達央インタビュー

アニメ・マンガ

2018/7/25

鈴木達央とは、どのような表現者なのか。自分は、「強靭な意志の力で筋を通す演技者」であると思う。携わる作品それぞれに自身のすべてを注ぎ、演じる人物の本質をつかみ取ろうと力を尽くす彼の芝居は、どんなときであろうとブレがないし、作品を観ていてとても心地がいい。『Free!-Dive to the Future-』は、とりわけそのことを感じさせてくれるアニメーションだ。2013年7月~9月に放送の『Free!』(TVアニメ1期)から、5年。当然、この間にも数多くの作品に出演し、鈴木達央は演技者として進化を遂げてきたわけだが、彼が演じる橘真琴は、ものすごくいい意味で変わらずに、「そこにいる」。主題歌を担うOLDCODEXのTa_2として、声優・鈴木達央として、『Free!』と向き合い真琴と過ごしてきた時間は、彼にとってどういうものだったのか。演技者としての揺るぎない哲学と矜持がにじんだインタビューをお届けする。

1本1本のフィルムを大事にしたかったし、それを貫きたかった

――『Free!-Dive to the Future-』(以下『DF』)はTVアニメの3期で、毎週アフレコがある形式でやるのはかなり久々ですけど、3期が制作されると聞いて、どんな感情が湧いてきましたか。

鈴木:もともと、(劇場版作品の)『映画 ハイ☆スピード!』のときに、「ここで終わりたくないよね」っていうことを信長(島崎信長・七瀬遙役)とずっと話してて。渚役の代永翼だったり怜ちゃん役の平川大輔さんとも話してたし、みんなそういう気持ちだし、TVアニメには出てたけど 『映画 ハイ☆スピード!』に出れなかった人たちの気持ちもあるよっていう話をしていて。特に、岩鳶の4人は収録中からすごく仲がよかったから、そういうことをちゃんと伝えたいねってことで、プロデューサーに俺や信長がめっちゃ話して、「まだやらないの?」みたいなことを言ってて。やっぱり、時系列的にメインでずっと一緒にやってたのは俺と信長だけだったから、ふたりして「ちゃんとやりたい」って固執してたんだよね。

 あと、最初に『Free!』が始まるときに、内海紘子監督が「見ている人がちゃんと笑顔になれるようなフィルムを作りたい」「高校生の青春時代を追体験できるものにしたい」っていう話をしていて。武本(康弘)監督は『映画 ハイ☆スピード!』を作るときに、「いろんな出会いがある中で、リレーに対して彼らがどう思いを積み上げていったのかわかるフィルムにしたい」「高校生のように、ちょっと自我が芽生えて能動的になる前、まだ個性があまりついてない中学生の頃にできた仲間と、一緒にいられることが楽しい子どもたちの青春を、フィルムで出したい」っていう話をしてたんだけど、俺たちも「ちゃんとそれを貫き通してほしい」っていう話をずっとしていて。(『Free! ―Dive to the Future―』監督の)河浪(栄作)さんも、アフレコが始まる1話のときに、「全部バトンをつないでもらってる気がしてる」って言ってたんだけど、中学時代を武本さん、高校時代を内海さん、大学生編を河浪さんがやることになって、リレーと同じでちゃんと引き継いで次に飛び込んでいく形になってるなって思えて。実際に映像にしていくときも、大学生編だからこそのこだわりを随所に織り込んでいってることを教えてくれて、それがキャストみんなのモチベーションに変わったところがあったから、信長と俺はすごくホッとしたところがあったかな。

――OLDCODEXのTa_2として音楽面で関わっていることも当然あると思うんだけど、いち演者というよりも、人間として深く関わってる感じが伝わってきますね。

鈴木:そうだね。1本1本のフィルムを大事にしたかったし、それをちゃんと貫きたかったんだよね。自分たちが関わったフィルムは大事なんだ、大切なんだっていうことを伝えたいと思ってきたし、そうやって出来上がっていった作品なんだよね。

――『Free!』に関わる面々、このチームを精神的に結びつけてるものってなんだと思います?

鈴木:この作品の根底にあるものじゃないかなあ。リレーの絆というか。実際、水泳の世界でもそうなんだけど、ひとりで表彰台に立つことが大事なのではなくて、みんなで勝ち取ったからこそ意味があるんだっていう。そこを大事にしてるから、すごくまわりに伝わっていくのかなあ、とは思う。しかも、みんなそれをファッションで言わないようにみんなしてるから。なんだろう、言葉にならないところでちゃんと相手を尊重したり、出てくるものを大事にすることを、みんながわかってるから。アフレコが終わったあと、「このときお前こうやってきたよね」「あれヤバかったなあ」「よくあんな攻め方してきたなあ」「困ったわあ」みたいな話をするんだけど(笑)、相手を信頼してるし、『Free! DF』になると積み上げてきたものがあるから、変に「ここ困ったねえ」みたいなこともないし、ちゃんとプロの現場になってるから。みんなその状態でやってくるから、芝居の引き算足し算も毎回面白いし、だからこそフィルムがどんどん生き生きしていくし、フィルムとしての完成度をもっと引き上げるためにできることをどんどん考えられる。そういったところも影響してるのかなあ、と思う。

――3期の『Free! DF』まで、TVアニメとしては時間が空いたじゃないですか。その間に劇場版はあったけど、物語上の時系列が違うっていう。2期の『Free! ―Eternal Summer―』が終わったところから3期のスタートまで、そんなに時間が経っていない設定だけど、物理的な時間は経っている。そこには難しさもあったのか、あるいはストーンときたのか、どんな感じだったんですか。

鈴木:人によるとは思うんだけど、俺に関しては難しさはまったくなかったかな。『映画 ハイ☆スピード!』で中学1年生の真琴をやったんだけど、自分の中で真琴の一番大変なピーク値がそこだったから。あのときはもう、どうしようかとにかく迷ってたし、音として成立するのかっていうところも大事だったし。とにかくそこで必死こいて、ようやくあのフィルムが完成したから、あれ以上に大変なことないっていう感じなんだよね。ただ、「あのときできたからそれで満足」じゃなくて、あのときできたものをちゃんと自分の中でピークとして置いておいて、それと同等のものがいつでも出せるよっていう場所にしておきたかったから。若さってなかなか簡単に表現できるものではないし、瑞々しさがあってまだ個性を持ってない真琴を表現するのは、すごく難しいことで。

 そこが一番大変で、最高速のところだなって思ってたから、いつでもそこに行けるようにしようと思って、自分の中でその調整はずっと重ねていて。前はあんなに大変だった真琴の声を出すことだったり、どう表現しようっていうことも、今は同じ声のラインなのに表現がふくよかになってるなって『Free! DF』に入って自分でもすごく感じてるから、自分の中でちゃんとそれを記憶しておいて、いつでも出せる引き出しにしておいたのがよかったのかなあ、と思ってたりはする。やっぱり、やってないときでも「こうだったな」「ああだったな」と思って、自分の中で練習したりするから(笑)、数ヶ月経ってる中での真琴の成長率みたいなものも入れられてるし、そこはすごくよかったなあ、と思う。

橘真琴に俺が透けてちゃいけない。だから俺は、いつまでもその陰の中でいい

――これはあくまで個人の感想けど、OLDCODEXのTa_2を先に知ってる身からすると、もう真琴の声を聞いただけで「これ、ほんとにあの人なの?」みたいな感じがあって(笑)。

鈴木:はっはっはっ。

――特に『Free!』の1期の頃、2013年、14年の頃って、ちょっと表現が微妙なんだけど、OLDCODEXが一番オラついてた時期じゃないかな、と(笑)。

鈴木:うん、そうだね(笑)。まあ、いろいろ尖らないとやってらんなかったときだから。

――真琴はもともとあまり主体性がない少年で、泳ぐ目的を見失ってしまったりもするし、隣に遙がいるからその横で自分も泳いでいたいっていうメンタルの持ち主で。翻って、鈴木達央はものすごく意志と目的を持って進んでいく人じゃないですか。

鈴木:そうだね(笑)。

――役者だから、当然自分とは全然違う人物を表現することはチャレンジでもあり、大きなやりがいのある面白いことだと思うんだけど、真琴とどう向き合って、彼がどう浸透していったのか、というプロセスについて聞きたいです。

鈴木:それはね、1期のときに死ぬほど悩んだ。やりながら毎回答えが見えなくて「大丈夫なのかな?」と思いながらも、鶴岡(陽太)音響監督に毎回救われてたことが大きくて。「真琴は、大地のような心ですべてを大陸的に包んでくれるもんな」「そういう奴だもんな、真琴ってな」って優しく俺に問いかけてくれて、「そこだぞ」っていうことをちゃんと言ってくれて。やっぱりそれは俺の中でもすごくヒントにもなったし、大きな課題でもあったし、「自分じゃなくて遙をまず優先したくなる気持ちってどこなんだろう?」って思ってたから、特に1期のときは信長とずっと一緒にいるようにしてたし。もちろん信長もいろいろ考えて、模索しながら遙と向き合ってたんだけど、見えてないところで俺も信長と向き合いたかったし、遙と真琴の関係性と同じように、俺も真琴のことを知りたかったから、ずっと一緒にいるような形を取ってたのかな、とは思ったりするね。

 その上で、自分と違うところ、あと意外と似てるところがあったり、それだけじゃない彼だけの個性ってどういうものなのかなあっていうことは思い描いてたりしてたから。俺から引き算して真琴に寄っていったというよりは、「俺、こういう人なんだけど、真琴、お前はどういう人間なの?」っていうことを、真琴と実際には対話ができないから、フィルムと自分たちの使える時間と関係性を使って、それを知っていったって感じかな。

――そうやって見えていった真琴は、どんな姿形をしてたんでしょうね。

鈴木:まず、一番最初に大事にしたいなあと思ったのは、真琴は体格が俺より10センチデカくて、言ってしまえばYORKE.と似てるんだよね。そういう体格の人がものを見る視線ってどんな感じだろう?と思って、当時はYORKE.の目線をよく見てた。「どこ見てんだろうな?」とか「どう見えるんだろうなあ?」とか。意外とあいつもまわりに対して気を遣うところがあったりするし、細やかなところで人の気持ちをスッて掬ったりするところがあるから。そこから、優しい声が出たり、優しい気持ちになったりするときって、何を見てそうなるのかなあ、とか想像したり。遙のことを目で追ってるわりに、意外とまわりのことを見ていたり、小さい頃に出会った人たちにはフランクにしゃべったりするのも実は真琴の特性なんだけど、それってなんでだろうなあ?とか。意外と気が強いんだなあ、とか(笑)、そういう一個一個を広げていく感じだったなあ。でも、悩んだときに、最終的に戻ってくるのはやっぱり泳ぐことが好き、プラス仲間が好きっていうところで、逆に言うとそこしかないんだなっていうことは、すごく大事にした。真琴自身も気づいてないところに、俺が最初に気づいてあげた状態で入れる状態にはなってるかな。

――ブレない人だっていう部分は共通してるんじゃないですか。

鈴木:うん、そこはあるね。あと意外と、自分のことを隠したがる。なんだろう、柔らかな自分以外なところを隠したがるのも、似てるっちゃ似てるのかなあっていう。うん、それは思ったかな。本当に自分ができることだったり、したいことは、水の中でしか出さないっていう(笑)。

――そのギャップを表現できるのも、役者として面白いところですよね。

鈴木:そうそう、そこもあったなあ。OLDCODEXでいるときは一番自分を出していいときだと思ってるから、出すようにしてるけど、自分が演者として何かをやってるときは、その役を背負ったり作品を背負ったりしてるから、なるべく自分の中でもちょっと違った側面というか、役ありきの自分の側面を出すようにしてるいて。「それってほんとの自分ですか?」って言われたら、そうではないからさ。

――おお。実は4年前に『攻殻機動隊ARISE』のホセ役について話を聞いたときに、「キャラクターがいて自分が存在するからそれ以上の主張はしたくない、ある種陰日向の存在でいい」って言ってたんですよ。それから4年経って、声優としてのキャリアの中でいろんなことがあったと思うけど、考え方が一切変わっていない、ずっと一貫してるというか。

鈴木:そうだね、そこは一緒。真琴の中に俺が透けるのがすごくイヤで、絶対にそれを避けたかったから、彼を理解したいんだと思う。彼を理解したいし、彼とともに歩んでる状態でいたいし、たとえそれが実時間で俺のほうが先に歳は取ってても、いつでも彼と並行して声をかけられるような状態でいる。だから俺と橘真琴は乖離してて当然だし、逆に言うと橘真琴に俺が透けてちゃいけないから。だから俺はいつまでもその陰の中でいいっていうことは、すごく思う。だから、何も変わってないね(笑)。

 それって、たぶん素敵な先輩に恵まれてるからだと思う。いろんな人の背中を見てるから、自分も変わらないものを持っていたいし、逆に言うとそれを持ってないと、先輩にも生意気な口を叩けない(笑)。そういう人たちはみんな実力主義だから、ちゃんとやっていれば「だったらもうしょうがないな!」ってなるけど、やれてなかったら「お前できてねえじゃん」って普通に言われちゃうから。なんか、そこもあるかな。一種のプライドかも。意地を張りたい、というか。自分たちが出したものは不特定多数にお披露目するものだし、知ってほしいなって思うものなんだけど、プレイしてる場所はものすごく制限されているというか、全部目端が届くところで行われてるから、それに対してのプライドかも。

――役者・鈴木達央にとって『Free!』という作品はどんな存在なんでしょうか。

鈴木:う~ん、なんだろうなあ。思ってる以上に観てくださってる方や知ってくださってる人が多いフィルムだなってすごく思うし、実際に応援もしてもらえてるっていうところで、いろんなとらえ方をしてもらえるようになった作品のひとつだと思う。でも、自分としての関わり方で言うのであれば、最初からそれは決まってて、とても悩んで苦しんで作り上げたフィルムのひとつで――甘えたり弱音を見せたりすることもできない状況で、自分ひとりで悩まなくちゃいけなくて(笑)。真琴に対してもそうだし、現場のことも含めて。そういう、逃げ場がない状況の中で悩みながら作っていって、それを多数の方に受け入れていただけたフィルムだったから、自信もついたし、とても得るものが大きかったし、「こんなにいろんなことができるんだ」と思って。だからこそ、自分の休みを使って、ホンを持って京都アニメーションのスタジオを全部回って、「あっ、これ書いたの……わかった、名前と画が一致した」って全員と話して、なんていうこともしたし。だから、『Free!』がどんな作品かっていったら、アニメをもっと好きになった作品だよ(笑)。

――名言が出た(笑)。

鈴木:(笑)うん、そこだな。アニメがもっと好きになった作品だね。それが一番シックリくる。京アニのみんなと、アニメの話をしてるのが楽しいんだよね。絵の話をして、「芝居どうなってんの?」「この画どうなってんの?」とか話をして、それでもっともっと好きになったから、「さらに自分が返せるものってなんだろう?」って思いながら、それ以降のフィルムに向き合えてるんだと思う。たぶん、『Free!』で知らないことはひとつもないからね(笑)。

取材・文=清水大輔  撮影=森山将人
スタイリング=久芳俊夫  ヘアメイク=加藤ゆい、高橋 優(fringe)

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