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Matsuo

【interview】

湧き出す衝動を叩きつけた会心の一撃、“Heading to Over”はどう生まれたか――OLDCODEX・Ta_2インタビュー

2018.7.25

現在放送中のTVアニメ『Free!-Dive to the Future-』のオープニングを飾るOLDCODEXの新曲、『Heading to Over』(7月25日リリース)。彼らが『Free!』シリーズの主題歌を担当するのはこれで4度目だが、ボーカル・Ta_2が本文中で「『これがOLDCODEXなんだよ』って言える曲になった」と語ってくれている通り、作品のテーマを表現しつつ、今のOLDCODEXが持つエモーション・タフネス・ポピュラリティのすべてをぶち込んだ、会心の1曲である。これまでも、自身のスタイルを曲げることなく進む道を切り拓いてきたOLDCODEXだが、『Heading to Over』は、彼らが今新たな地平に立ったことを示している。今年1月・2月に開催した大規模アリーナでのライブの振り返りも交えつつ、充実の新曲を完成させたOLDCODEXの現在について、Ta_2に熱く語ってもらった。

無意味に斜に構えた状態で行く時期は終わった

――最新シングルの『Heading to Over』、いちリスナーとしての感想をシンプルに言わせてもらうと、これは会心の一撃だなあ、と思いました。めちゃくちゃカッコいいですね。

Ta_2:でしょ? 「夏に出すヤツはヤバいよ」って言ったじゃん(笑)。もう、そういうふうに作ろうと思ってたから。“Heading to Over”って、“Rage on”と同じような気持ちだったんだよね。“Rage on”は初めて俺とYORKE.でフルサイズを作った曲で。そこから『Free!』がずっと続いてきて、4回目の主題歌のオファーをいただいて作るとなったときに、自分が今まで吐露してなかった、今までだったらハスに構えて言おうとしなかったことも、「『Free!』の曲だったら言えるんじゃねえか」って、ずっと思ってて。

“One Side”(4月リリースの配信シングル)のときは『SERVAMP(-サーヴァンプ- Alice in the Garden)』の世界観があって、そのときに自分たちが思ってるものをちょっと斜に構えた状態で言葉や音に出していって。『Butlers(~千年百年物語~)』のときの“Growth Arrow”(2月リリースのシングル)では、どこかソリッドになった、アルバムの次の最初のシングルで、自分たちのひとつの決意表明みたいなところを出したいなあって思ってたけど、それを全部ミックスした状態でもっとさらけ出せるのが今回だと思ってたから。そこをすごく大事に考えながら作ったし、混じりっ気なしでさらけ出したシングルかもしれない。俺の音に対してのわがままなこだわり、理論的に作るところと感情的に作るところも、全部一回ぶち込むっていう流れで作った曲、かな。う~ん、「これがOLDCODEXなんだよ」って言える、なんかそういう曲になった(笑)。

――確かに、“Heading to Over”って、“Rage on”とどこか似ていて原始的というか、根源的なものをものすごく感じる曲なんですよね。沸々と出てくるもの、本来持ってるものが噴出してる感じがする。

Ta_2:そうそう。それはもう超意識したし、それを出さないといけないと思いながら作ってたから。楽曲を作るにあたって制作サイドと打ち合わせをしたときに、(『Free!- Dive to the Future -』監督の)河浪さんから「今回、Dive to the Futureっていう言葉を掲げたくて」っていう話を聞いて、「それ、すっげえいい言葉だね」ってYORKE.と俺が反応して。物語が主題として持っているものを聞いて、YORKE.はすぐに「歌詞書けるわ」って話をしてたし、俺も一筋の光がちゃんと見えたところから作っていって。自分の中でシックリと来るサビが見つからなくて悩んで、結局1曲作るのに1ヶ月以上かかったんだけど(笑)。

――(笑)。

Ta_2:でも、悩んでよかったなって思う。もう、いろんなものに塗れながら楽曲制作に入ってるけど、他の作曲してる人たちと違うのって、そこだと思うんだよね。ひとつの顔だけじゃないから、頭の中に入ってくる情報だったり、自分が身にまとう状況が多すぎるんだけど、それすらも曲に全部入れたいと思って。もう何からも逃げたくないし、やっと受け入れてもらえるような土壌もできてきたから、斜に構えることもしなくていいと思ったし、すごく曲に向き合ってたなあ。

――“Heading to Over”は音楽的に成し遂げようとしてることのレベルがすごく高い曲だと思うんだけど、それがわかりにくいものに全然なってなくて、すごく親しみやすい形になって外に出力されている。そこがとてもいいと思うんですよ。

Ta_2:そう。サビとかも、歌始まりにしたいっていうことはずっと言ってたから。パッとわかるものがいいんだよね。日本語で飛び込んでくるサビ始まりの曲って、俺らの曲にはあんまりねえなって、ずっと思ってて。これだけいろんな楽曲があふれてる世界だから、ともするとすぐ沈んでしまうけど、そうはしたくないと思って。どっかひとつの言葉でもいいから、フレーズだけ覚えて帰ってくる、くらいの勢いがある曲にしたくて。歌詞も、直接的で誰にでも届くような言葉を使ってやりたいっていうことで、YORKE.に伝えて。もちろん、「これ、どういう意味なんだろう?」って考えさせるような歌詞もいいと思うんだけど、それはもう十分やってきたし、それに頼ることもしたくないっていう話をして。ツアーのときから、そんな話はずっとしてたかな。

――「だろう」を許さないスタンスというのかな、「伝わるだろう」とか「感じてもらえるだろう」ではなくて、「伝わるものを作る」っていう意志を感じる曲であり、歌詞ですよ。

Ta_2:そう。そこはすごく大事にしたかった。いろんなところでプレイすることも増えたし、一回トゲでツンツンしに行って、そこに傷跡残すことは散々やったから、「次はその爪痕に指引っ掛けてかっさばくときだな」と(笑)。爪痕が一個ついたら、次はそれを扉みたいに開きゃいいんでしょっていう。なんか尖る時期が終わったというか――無意味に斜に構えた状態で行く時期は終わったな、と思っていて。

――実際、相当強い意志を持って曲に向かってるって話ですよね。「伝わるだろう、だけどもしかしたら伝わらないんじゃないか」というマインドだと、ある意味逃げ道を残した状態になるけど、今のOLDCODEXは完全に退路を断っているというか。

Ta_2:やっぱり、ちゃんと戦うときって逃げ道はないよね。逃げ道があるのは、たぶんある程度の成功を収めた人だよ。ある程度の成功や、何かの満足感を得た人がそれをやっていいんだと思う。

――あるいは、まだ全然踏み込めてない人とか。

Ta_2:そうだね。ちゃんと伝えて、なおかつそこに想像する余地も与えることを、ちゃんとやればいいと思うんだよね。そこは、俺らの中で「OLDCODEXの音楽ってなんだろう?」っていうところで、ひとつ小さな目標ができたかなあ、とは思う。

未来の自分たちが振り返ったときに、「これもひとつの一歩だったね」って言えるように、どの楽曲もしていきたい

――1月、2月に大規模アリーナでライブがあったじゃないですか。あれは、ふたりにとっても、それこそ大きな爪痕を残した体験だったんじゃないかと思うんだけど。

Ta_2:まあ、パッと思ったのは、正直「もうどこでもできる」っていう。他のバンドマンたちと違うのって、俺自身がいろんな仕事をやっていて、機会にいろいろ恵まれてることもあって、たくさんのフィールドで舞台上に立たせてもらってることだと思ってるんだけど、OLDCODEXでは立ったことがないところがたくさんあって。でも今回アリーナのステージに立たせてもらったときに、いろいろ悩んだり難しいこともたくさんあったんだけど、実際にライブやってみて「どこでもできるな」って思ったし、無理してライブをすることはねえな、と思った。というのは、自分たちが背伸びして「こういうところでもやってみようか」みたいな、チャレンジチャレンジでやっていく必要はもうないんだなって思ったんだよね。

 たとえば、今までは「ホールをライブハウスみたいにしたい」とか思ってるところもあったんだけど、それは違う、と思って。ホールはホールのライブをすればいいし、ライブハウスはライブハウスのライブをすればいい。その主題が自分の中ではっきりしてなかったから、ちょっと力入ったり困ったりしてたんだなって思って、そこはすごく反省したね。せっかく俺たちにはYORKE.っていうヤツがいて、絵があるのに、そこでいい意味でも悪い意味でも過信して、「こうやってできるはずだ」って思って自分たちに無理を強いることになったんだなあって。だったら、そうしなきゃいいっていう。アリーナ2本のライブは、その答えが全部見えたっていう感じがあったな。

――なるほど。

Ta_2:だから、「コンセプトをはっきりさせよう」っていうことが、自分の中ですごく大事になった。ライブハウスでライブをやる理由、ホールでライブをやる理由、フェスでライブをやる理由をしっかりさせようって思って、そこからいろんな情報を集めるようにした。いろんなライブを見て、いろんな舞台装置を見て、いろんな絵を見て、それをどうやったら俺たちに還元できるかなあ、これは俺たちにできないなあとか、これは必要ないな、これは必要だなっていう情報を取り込んで。

――今まで感覚的だったものが、どんどん言語化されていってる感じ?

Ta_2:そうだね。それは大きいかもなあ。

――言語化できるスキルも当然進化のひとつだろうし、それに対して意識的であろうとしていることもいい状態だし。そうすることで、OLDCODEXの音楽はより伝わるものになっていくでしょうね。

Ta_2:うん。そういう意味では、3月末に出た『Warped(Vans Warped Tour Japan 2018)』がすごく大きかった。刺激になるライブがとにかく多くて。方程式の最後の数字が見えた、みたいな。それまでは、HOOBASTANKとの3マンとかで学んだことを大事にしながら、「次はどういうライブをしたらいいのか」って考えてたんだけど、どこか結実しないものもあって。だけど『Warped』で、「あっ、こういうことだ」ってちょっと見えた部分があって。そこからまた自分の中で考えたりアイディアを取り込むことをやって、やっと形が見えてきたぞって思えるようになったのが最近かな。

 あと、自分がしたいことや実現させたいことって、それこそ言語化されていくし、明確になっていくから、今のほうがスタッフに対しての要求なんかもはっきりしてるよね。自分たちは常に後ろがない状態だから、攻めるしかないんだよ。下がったら倒されるから(笑)。どんだけパンチもらっても、自分の意識さえ飛ばなければ、いくらでも前に攻めることができるから、パンチ繰り出していけばいいっていう。意外と自分たちがタフなんだってことも覚えたし(笑)。

――まあ実際、OLDCODEXってなにげに逆境跳ね返し系だから(笑)。

Ta_2:ははは!

――ちょいちょい、逆境にぶち当たるんですよね。

Ta_2:あるよ、ある。いっぱいある。

――初の武道館ライブで若干テンパる、とか。けっこう、らしくないように見えることをよくやってる人たちだな、という印象が(笑)。

Ta_2:(笑)やってるね、意外とある。

――トライ&エラーって言うけど、やっぱりエラーも少なからずあって。だけどそれが何も無駄になってないし、今のタフネスにしっかりつながってるんですよね。

Ta_2:そうだね、そこはすごくあるかも。そういうことを『Heading to Over』にもちゃんと込めたかったし、未来の自分たちが振り返ったときに、「これもひとつの一歩だったね」って言えるように、どの楽曲もしていきたいから。そういうことを、ひとつひとつ込めていこうと思った。

――そして、8月からのツアーはライブハウスを回るわけですけど、やっぱりライブハウスならではのホーム感っていうのもあるんですかね。

Ta_2:そうだね。距離が近い分だけ、やりたいことや見せたいものがしっかり伝わりやすい環境ではあるだろうし。でも「ちょっと落ち着くね」みたいなことはないかな。自分の中では、アウェイもホームも変わらなくなってきたし、そういうところを、今回のライブでは強く見せられたらな、とは思う。とにかくいろんなところでライブやらせてもらって、それをちゃんと自分の中で精査することもできたから、その上でホームゲームに対して向かおうかなって今は思ってるかな。逆に、「どうやってビックリさせてやろう」とか、「パワーやトルクの上がった俺たちをどう突き刺してやろう」とか考えるね。ライブハウスのツアーだからって、こぢんまりとしたパワー感でやると思ったら大間違いだぞって。

取材・文=清水大輔

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